人には46本あり、ザリガニには200本あるもの。
さて、なーーんだ?
2021年12月22日のこと。
年末も差し迫る冬至の夜、私はある方に会うために横浜シーサイドラインに揺られていた。
川沿いの夜景もライトアップされてロマンチックな気持ちになる。
確かこの駅でいいんだよな。。
と思いながら改札を抜け、階段を降りる。
そこには見慣れない風景と立ち並ぶ工場や大きな輸送トラック。
おかしいな?
と思いながらスマホを取り出してマップを検索する。
目指すべき場所は隣の駅らしいのだが、前回その場所へ赴いたときには確かにこの駅で降りたはず。。
人の記憶というのは本当に曖昧だ。
右往左往していると、スマホに着信。
見慣れた番号が画面に映し出されていた。
『もしもし、駅に着いたのだけど、風景が見慣れないんだ。』
通話状態のまま道案内を乞う。
どうも会話が嚙み合わない。
その裏道をまっすぐ行くと、、工場の裏手なのだが。。
どこにもたどり着きそうにない、洗濯機の置かれている場所。
この奥に目指すべき場所が??
ふと思い返し、駅名を告げてみる。
『えっ』
電話の向こうで驚く声。
行き過ぎた。
やはりひとつ前の駅で降りるべきだったのだ!
その近辺は横浜の工場地帯。
国道が一直線に通っており、景色も変わらない。
だからといって降車駅を間違えた言い訳にはならないのだけど。
事前確認は、やはりとても重要だと改めて気づいた。
慌ててもと来た道を戻り、逆方向に走る電車に乗り込む。
手土産を持ってきておいて良かった。。
頼むぞ、鎌倉ジャーマンのロールケーキ。
と内心ホッとしながら関係者と合流。
時間に余裕を持っていたおかげで、降りる駅を間違えたけど遅刻せずに済んだ。
~ ・ ~
厳重なセキュリティを潜り抜け、その場所へ。
部屋に入ると目に飛び込んでくる、溢れんばかりの専門書。
背表紙には【遺伝カウンセリングの全て】【臨床と実践】【生まれてきてくれてありがとう】【染色体ってなーに?】などなど。
ふと見ると、おにぎり型のテーブルにはそれらの書籍を上回るほどの駄菓子が盛られている。
【うまい棒】【くんせい卵】【限定版アルフォート】【プチ羊羹】などなど。いつからここは駄菓子屋さんになったのだ。。
明日にでも開業できそうだ。
と、ぶつぶつ独り言を吐いていると『あ~~~‼おひさしぶり~~♡』と、満面の笑顔で迎えてくれる女性が。
この方こそ、私を招いてくださった心優しいはるか先生。
その眼には慈悲がこもり、緊張していた私の心を一瞬で溶かしてくれる。
縁あって夫婦ともどもお世話になっている、お医者さまである。
その方に、なんとカンファレンスにお招きいただいたのだ!!
あな、嬉しや。
(慣れない古語などを使ってみる)
涙が出るほどの嬉しさに、この日はムードメイカーになろうと心に決めたのだった。
ただひとつだけ注意書きをしておきますが、普段は病院のカンファレンスに部外者が立ち入ることはできません、もちろん。
個人情報や守秘義務のかかったもの、見てはいけないものや記録してはいけないものなど、目に見えないセキュリティが満載なのです。
MIBみたいにサングラスをかけた黒服の男がピカッとすれば記憶がなくなってしまう、、なんてことはもちろんなく、そこは信頼関係でご了承いただいたという経緯があります。
守秘義務に関してはアトリエ・IMAを開業して5年、嫌というほど味わってきているし、その内容はどんなことであれ外部に漏らしてはいけないという約束のもとにセラピストとクライエントの関係は成り立っている。そのことを、改めて試されているようにも感じていた。
さて、定刻になりzoomカンファレンスが始まった。
続々と集まってくる参加者。
ドクター、認定遺伝カウンセラー、大学院生など、錚々たるメンバーが入室してくる。
いよいよ、いよいよ始まる。。
事例の詳細については守秘義務があるため省きますが、意外と皆さんから発言がない。意見も同意も賛同も、ないように感じていた。
もっと活気のあるものを期待していた私は少し残念だなぁと思いながらその光景を眺めていた。
顔を出していない人もいるのだな、これじゃその場にいるかわからないじゃないか。せっかくの貴重な機会なのに。
私の所属している学会でも同じような現象は起きている。事前の説明では顔出しが基本なのにも関わらず。
そんなことを思い出しながらも、カンファレンスは続いてゆく。
その状況を見かねて口火を切ったのが、背景が日本家屋の大広間に堂々と佇む一人の男性。
私などではどう転んでも太刀打ちできない、雲の上の、そのまた上の人。
(中座してしまったのだが、その理由がドクターの中のドクターと思えるもので、私は心を完全に掴まれてしまった。)
~ ・ ~ ・ ~ ・
カンファレンスが無事に終了すると、はるか先生がなぜか活気だっている。
何か始まるのかな??とたじろいでいると、、
『みなさ~~ん!お待ちかねの~、クリスマスクイズ始めますね~~♪』
どこからともなく流れてくるジングルベルの鐘の声。
さっきまで真剣な顔をしていた参加者の雰囲気がたちまち和む。
ここで、冒頭の【ザリガニには200本あるものはな~~に?】
に戻るというわけ。
正解は、染色体の数。
ザリガニ。。恐るべし。
そんな簡単(?)な問題もあり、国試で実際に出題された過去問もあり、はるか先生はとても楽しそうに問題を繰り出してゆく。
『景品もたくさんありますよ~~★』
さて、そろそろ私の出番かな、っと。
どこから見つけ出したのか、景品となっている崎陽軒オリジナルのハッピを着込み、画面の前でおどけてみせる。
キョトン?だれ、この人??
という声が画面の向こうから聞こえてきそう。
それもそのはず、私は突然現れ、まるで普段からそこにいるかのように振舞ったのだ。
もちろん真面目な問題だけではなく、嵐ロスだという認定遺伝カウンセラーからの『私の好きなメンバーは誰でしょう!』と画面いっぱいに映し出された嵐のメンバー。
ちなみに、私の誕生日は大野クンと同じ。
(どうでもいいプチ情報)
そのことを告げると、出題者ははにかみながらポッと顔を赤らめる。
(なぜだ?)
はるか先生の周りには、老若男女問わずこんな素敵な面々が集まる。
初めは照れていたメンバーも、最後には景品の取り合いに。
みなさん、とっても楽しそう。
時の経つのも忘れ、童心にかえる冬至の夜。
私はこの時に改めて認識した。
自分自身のこれまで歩んできた道が、ひとつとして間違っていなかったのだと。
公認心理師という、心理系の国家資格ができて4年、大学院で学んでいない実務者の是非が問われてきた。
反面、社会的経験の少ない大学院生が資格取得後まもなく社会に出て、人の気持ちがわからない臨床家が増えているのも現実。
ただ、このことに関しては支え合えばいいだけだと私は思っている。
それこそ多職種連携のように。
学びを深めるのは大切だし、社会的経験を重ねて(時には傷ついて)多くの人に触れることも大切。
その両輪が、いつか世界のためになる日が来ると信じたい。
いや、絶対に来る。
最後にーー
405号室の皆さま、はるか先生、zoomに参加していた諸先生方、貴重な経験をさせていただき心より感謝いたします。
皆さんの真摯な姿勢がこの文章を私に書かせ、そして何より私のやる気を奮い立たせています。
いつの日か、またお会いできる日を楽しみにしております。
ありがとうございました。